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豪快にスキーしたような感じで仕事がしたい。松田翔太インタビュー(後編)

聞き手: Max Mackee (Kammui 創立者)
Photos by Ranyo Tanaka

2023.1.29


マックス・マッキー(以下マックス): バックカントリーの一番の魅力って何でしょう?

松田翔太(以下、翔太): パウダースノーを滑ることですね。どんな高い標高だろうが低かろうが、2ターンできても楽しいです。パウダースノーを滑ることが一番大事で、一番楽しいと思っています。けれど、スキーの準備をするのも好きなんです。

マックス: 準備も好きというのは興味深い。

翔太: 明日は風が吹いているらしい、じゃあウィンドブレーカーを持ってこうかな。午後からもっと寒くなるかもしれないなら、フリース持っていくのか、ライトダウン持って行こうか、と悩んだり。何が面白いかというと、自分のチョイスが自分のその時を作るわけじゃないですか。誰かに助言された、「あれ持ってた方がいいよ」っていうお勧めはあっても、判断するのは自分です。次が快適な時もあれば、新しい山に行けば今度はその山では良かった物が、次の山では違う、などいろいろなことが起きます。日本やアメリカ、カナダ、ヨーロッパの山がそれぞれ違う、というこれもやっぱり面白い。常に何かを準備するのが元々好きなのかもしれませんね。

マックス: バックカントリーがもたらす心への影響は、何か感じられますか?

翔太: バックカントリーをするところまでたどり着くことは、とても貴重なんです。白馬とか北海道に行くこと自体、少ない余暇を使って行く。例えば雪も良く晴れていたら、もっと貴重な時間になる。何かを作り上げること、俳優業やアートにも携わっていて、滑ることはそれに近い感じで、仕事以外で何か作り上げる経験です。
山に登るだけで大変なのに、雪質がどうなるかわからない山でパウダーを降り、悔いなく帰ってくるのは、アスレチックでクリエイティブなことなんです。自分にとってのバックカントリーはそういうもので、いつも東京での生活に例えているんです。

マックス: 例えるってどういうことですか?

翔太: 何であの時、豪快にスキーしたような感じで仕事ができないのか、なぜあの雪山を滑るように生きられないのか。なんで雪庇を叩いてるように生きてるんだろうとか。山ではあの自由さを感じるんですよ。それは特に東京出身で自然がない土地に住んでいるというのも理由の一つかもしれません。

マックス: 東京には自然があまりないけれど、1時間でサーフィンや山にも行けるし、沖縄へも飛べる場所ですよね。では最後に、今まで一番印象的なバッカクカントリーの体験を教えてください。

翔太: バックカントリースキーには、ランキングを付けるようなことができないんですが、多分状況や技術、年齢などを考慮すると思う。
でもあげるとすれば、旭岳。パウダースキーで上手になり始めた山です。
結局スキーが上手くなってるんじゃないくて、雪が良いとうまく滑れるんです。当時オークリーと一緒に仕事していて、旭岳の雪質が非常によく、思った通りに操作できました。それで旭岳のことが大好きになりました。

マックス: それはいつ頃? 誰かガイドと一緒にですか?

翔太: 上野雄大さんと浅川誠さんです。確か27歳ぐらいの時でした。
マックスのベストはいつ?

マックス: やっぱり比較できないんですよね。いつも、ベストなんです。

翔太: わかります、その時の気持ちなんですよね、恋愛に近い。(笑)

マックス: 基本的にバックカントリーは、その瞬間で今をフルに楽しむから、それぞれの経験が特別。一番印象に残ってるのは一緒に行った立山です。前の日に飲み過ぎてフライトを逃し、それでもなんとか間に合った。急な地形を登ったり、一日中かなりタフなバックカントリーだった。それで1日の最後に、夕焼けに向かって滑ったんですよね!

翔太: あれは素晴らしかった。

マックス: パウダーではなかったけど。

翔太: あれがパウダーだったら危なかったかも。

マックス: 2キロぐらい滑りましたね。その時山には私たち以外には誰もいなかったのも素晴らしい体験でした。
松田さんはブラッククロウズのスキー板を愛用されていますが、ブランドとの関係性を教えてください。

翔太: 個人的には日本のスキーがあまりカッコよくないと感じていました。80年代のスキーブーム以降から、時がそのまま止まってしまったのかと思えます。カッコ良いスキーをしたい、カッコ良いスキーブランドと出会いたいと思っていた時に、雑誌でブラッククロウズのスキー板を見つけました。
すると藤原ヒロシさんの友人がブランドのオーナーであるカミールだということを知り、紹介をしてもらったことから板を使い始めました。 ブラッククロウズの板はしっかりとスキー操作ができないと難しい。そう感じた時に、カミールから「翔太、ブラッククロウズのスキー板で日本の雪を滑ってどう感じた?」 って聞かれたんです。
「重いし、ターンをしようとしてもうまく曲がらない。でもパウダーなら技術がなくてもターンができる」と答えました。
その後にシャモニーに行ったら、日本とは雪質も斜面も全く異なると気づきました。カミールの考えるスキー板のコンセプトが好きなんです。僕にとってブラッククロウズは未知なる世界やカナダの山や日本の立山ではく一番信頼できるブランドですね。

マックス: 今日はありがとうございました。またバックカントリーに行きましょう。



Profile

松田 翔太(まつだ しょうた)

1985年9月10日東京生まれ。日本の俳優。趣味は登山とスキー。近作に映画「東京喰種 トーキョーグール 【S】」、映画「一度死んでみた」(浜崎慎司監督)、映画「望み」(堤幸彦監督)、NTV系 2022年1月期 水曜ドラマ『ムチャブリ! わたしが社長になるなんて』がある。


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