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青い海の中で地球と一体になる。沖縄フリーダイビング・福田朋夏

聞き手、ポートレート撮影: 田中嵐洋

2022.12.29


自由自在に珊瑚の森をすり抜け、ウミガメと一緒に泳ぐ。世界の海で100メートルもの深さへ到達する。フリーダイバー福田朋夏さんに、沖縄の魅力、瞑想としてのフリーダイビングについてインタビュー。

Tomoka Fukuda Filmed by Carlos Coste and Islael Gil

フリーダイビングとの出会い

嵐洋: 出身の北海道から、なぜ沖縄に移住されたのですか。

朋夏: 北海道って食材の豊かな海っていうイメージで、海って黒いものと思っていたんです。あのグレーな感じ、そういう海しか見てなかったんですけど、沖縄に旅行に来た時にソーダ色の海と白い砂浜を見て、こんな海って本当にあるんだなって思ったんですよね。海に潜ってみたら本当にカラフルな世界で、一目で恋に落ちたぐらいの衝撃がありました。
素潜りをするようになって、だんだんもう海に取り憑かれたようになってしまい、それでもう沖縄に引っ越そうって決心しました。

嵐洋: フリーダイビングに出会った時に、何をビビッと感じたのですか?

朋夏: 素潜りは遊びで結構やってたんですけど、2010年ぐらいに世界大会が沖縄であって、セーフティーダイバーとして参加させて頂きました。世界中のフリーダイバーが潜ってる姿を見てもうすごい感動したんです。綺麗に海の中に溶け込んでいる姿を見て、私もちょっとやってみようかなと思って、翌年に競技として本格的に始めました。

嵐洋: インストラクターをされてますけど、なんで教える側に立ったんですか。

朋夏: 今まで世界中いろいろ海へ入っていろいろ経験してきて、やっと日本、沖縄に帰れたんですよ。
今までは自分だけ記録を更新して行こうっていう気持ちだったんですけど、やっぱり人にこの経験を還元したいなと思って始めました。

嵐洋: 今何年ぐらいやってらっしゃるんですか、その間も参加者も増えていますか。

朋夏: 日本に帰ってきてからだからまだ3年ぐらいで、参加者は増えていますね。

嵐洋: 参加者は、同じようにフリーダイビングをしたい人と、シュノーケリングしたい人とどっちが多いですか。

朋夏: ツアーとかだったらシュノーケリングでちょっと潜ってみたいという人も来るし、本気でフリーダイビング習いたいという人も結構来ますよ。

今まで世界中いろいろ海へ入っていろいろ経験してきて、やっと日本、沖縄に帰れた


青い海中でのメディテーション

TOMOKA FUKUDA CWT-100m dejablue9 Cayman2018

朋夏: 海に潜るって本当に深い瞑想なんです。やっぱり深く潜ると精神にも直面するから、いやでも集中しなきゃいけないんです。ちょっとでも気持ちがずれると変なダイブになっちゃったり、ちゃんと集中しなければならない。その状態が良いメディテーションになってます。
人間はそもそも自然の一部なのに今は結構外れています。そして社会でも孤立してしまうけれど、自然の中に入るとまた戻っていけるというか、繋がる瞬間がある。
毎回経験できるものじゃないんですけど、そうなると本当に全てが美しく見える。もう感謝でいっぱいになり、それが1、2週間続くからやめられないんです。本当に年に1、2回あるかなっていう感覚なんですけど、地球と一体になる感覚があります。

嵐洋: 競技で潜るのとプライベートで潜るのとは違いますか。

朋夏: わぁ綺麗っていう感じで入るのと違って、競技の時は集中しなきゃいけないし、命も関わってくる。もう本当に精神統一して瞑想状態で入りますね。

嵐洋: 瞑想とか精神統一する状態ってのは自分にどういうものを生み出すんですか?

朋夏: 普段って常に何か考えてるじゃないですか、今日何食べようかなとか昨日こんなことがあったなぁとか、常に頭の中にあるけれど、でも海に潜ってる時ってその時しかないんですよ、何も考えない状態。今を感じる、そういう状態を作るっていうのが自分には大切な時間です。
それは誰かと共有できず自分一人で見る世界、本当に贅沢な青が感じられます。わかるかなぁ。今日の青最高だなぁとか思うの。

嵐洋: 普通に生きてる中でそういう時間って絶対無いですよ。

朋夏: そうなんです、だから1回の潜りで旅をしているような感じがします。

嵐洋: 瞑想は、考えを消すのが難しいんですよね。

朋夏: 消すんじゃ無くて、何かに集中するって言うのかな、五感に集中する、感じるんです。考えるじゃなくて感じる方に、シフトしていくの。
頭の中にふわふわしている色々な考えを、一回ストンってお腹に落とす感じですね。そうすると五感に集中できて、例えば波の音とか光とかに感覚が集中していく感じです。あと自分の真相とか。

嵐洋: すぐやりたくなりますね。

朋夏: そんな体験コースがあってもいいですね。
ヨガで有名なわかちゃんっていうモデルもやってるお友達とイベントで、彼女と一緒に潜ってる状態の時を言葉にして、どんどんみんなが瞑想に入って行くってのをやったらすごい大好評でした。

嵐洋: どんなふうにやるんですか、瞑想でダイビングしているときの状況を話すって。

朋夏: 私が体感していることを言葉にしていくんです、で一緒に瞑想しながら海に潜る。

嵐洋: 映像で100 メートル 潜る前の状態を見て、呼吸を整えとても集中してるのかなと。あの瞬間はどういうマインドに持って行くのですか。

朋夏: 普通の呼吸をしてるんですけど、その吸い込みに使う時間は本当に潜る数秒前ぐらいで、本当に瞑想状態みたいな感じで入ります。
意気込む感じではなく、自分が海に溶け込んで一部になるような、海に受け入れてもらおうみたいな感じで潜ります。
海と争っちゃいけないんですよ、絶対勝てないから受け入れてもらわなきゃならない。

嵐洋: へぇ〜


沖縄の空気 素潜り 呼吸の秘密

慶良間の海を潜ってきました。透明度も良くて最高のコンディションでした。GoPro9で撮影しています。

嵐洋: 海以外の沖縄自体の豊かさについてもお聞きしたいです。

朋夏: 沖縄に着いた瞬間にふわっとする空気ですね。わかりますか。海や緑も綺麗で鮮やかだし、なんといっても人がとてもあったかいんですよ。住んでる人々のエネルギーがとても良くて。
色々世界を回ってきたんですけど、やっぱりこの沖縄に帰ってきたいっていう気持ちがすごくありますね。

嵐洋: 人がめちゃくちゃいいですよね。皆さん優しくて。

朋夏: 優しいし素直だし。何かあったらこれ持ってけあれ持ってけ、って。カメカメ攻撃受けるし、食べろ食べろという意味なんですけど(笑)私も最近そういうふうになっちゃって(笑)
最近はネットとか映像でしか、自然を目にしない人もいますよね。だから海などに入って、本当に肌で感じて欲しいなと思います。自分の目で今の自然を見てなにか感じてほしいです。

嵐洋: できればシュノーケリングよりも青い世界を見てもらいたいっていう感じですか。

朋夏: そんなこともないですよ。私が一番最初に感じたのはシュノーケルでちょっと潜ってみて、魚と一緒になって泳いだ事に感動したので、そういうのもいいなと思います。もし興味があったら深い世界も見てほしいな。

恩納村にあるアポガマでフリーダイビングのトレーニング

嵐洋: 魚になる感じ、僕も感じましたよ。魚が逃げないし。

朋夏: スキューバっていろんな魚たちをじっくり見れるって言うのもある。だけどフリーダイビングや素潜りした時に何が違うかというと、自力でこの水中の生物達と一緒に泳いで一体になるところですね。

嵐洋: 自分は沖縄とか来てやっと素潜りできるようになったし。下にいる間に魚が目の前にいる感じがすごく居心地良くて、それ見てると結構息が保つようになってきました。

朋夏: 意識の持ち方で、息の長さも変わってくるんです。苦しい苦しいに集中しちゃうと本当に苦しくなるから、例えばさっき言ったみたいな、このエビかわいいとか光が綺麗だなとか、そっちに意識を持っていくと、全然息のこらえ方、止める量が全然違う。

嵐洋: その意識の持っていき方で、救われる人はたくさんいそう。ダイビングとメディテーション、その二つの軸で海の中の世界を一緒に体験ができそうですね。
今日は有難うございました。

朋夏: 有難うございます


Profile

Kammui Guide

福田朋夏(ふくだともか) フリーダイバー

北海道出身、幼少期から水泳に親しむ。2011年から本格的に競技を始め、わずか2年で80mを達成。その後2018年ケイマン諸島にてCWT100mを達成。女子では世界で5人目の100m台に到達。活動拠点は沖縄本島。現在はトレーニングの傍ら地元でのフリーダイビング普及やビーチクリーンなどにも取り組んでいる。
Instagram: @tomoka_fukuda

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